歯を失った後、そのままにしていませんか?抜歯後の適切な治療を行わないと、周囲の歯が傾いたり、噛み合わせが崩れたりするリスクがあります。歯を抜いた後には、大きく分けて「ブリッジ」「入れ歯」「インプラント」の3つの選択肢があります。それぞれの治療法には特徴やメリット・デメリットがあり、患者様の口腔内の状態やライフスタイルによって最適な治療法が異なります。
そこで今回は、抜歯が必要となるケースを解説した後に、抜歯後の治療の選択肢として「ブリッジ」「入れ歯」「インプラント」の3つについて詳しくご紹介します。歯を失った後の適切な治療を知ることで、健康な口腔環境を維持するための第一歩を踏み出しましょう。
▼抜歯が必要となるケース
歯を抜かなくてはならないケースには、以下のような理由が考えられます。
◎重度の虫歯
虫歯が進行し、神経まで達している場合や、根の治療ができないほど歯が崩壊している場合は、抜歯が必要になることがあります。
◎重度の歯周病
歯を支える骨が溶けてしまい、歯がグラグラになった場合、保存が難しくなることがあります。
◎外傷
事故やスポーツによる強い衝撃で歯が折れたり、割れたりした場合、修復が困難なことがあります。
◎矯正治療
歯並びを整えるために、スペースを確保する目的で健康な歯を抜くことがあります。当然ですが、この場合は便宜的な抜歯となるための、その後に補綴治療を行う必要はありません。
◎親知らずのトラブル
親知らずが正しく生えておらず、隣の歯や歯茎に悪影響を及ぼす場合、抜歯が推奨されることがあります。
▼抜歯後の治療の選択肢
歯を失った後の治療には、以下の3つの方法があります。
ブリッジ:失った歯の両隣の歯を支えにして、人工の歯を装着する治療法
入れ歯:取り外し可能な人工の歯を装着する治療法
インプラント:人工の歯根(インプラント)を顎の骨に埋め込み、人工の歯を装着する療法
◎ブリッジの特徴
ブリッジは、失われた歯の両隣にある健康な歯を支えとして、人工の歯を固定する治療法です。この方法では、支えとなる歯(支台歯)を削り、そこにクラウン(被せ物)を装着し、間に人工の歯(ポンティック)を橋渡しのように取り付けます。ブリッジは固定式であり、違和感が少なく、しっかりとした噛み心地を提供する点が特徴です。歯の喪失による噛み合わせの乱れを防ぐだけでなく、見た目の美しさを維持することも可能です。ただし、支台歯に負担がかかるため、健康な歯を維持するための適切なケアが求められます。
【ブリッジのメリット】
・取り外しの必要がないため、装着感が安定している
・比較的短期間で治療が完了する
・保険適用のものもあり、治療費を抑えられる
【ブリッジのデメリット】
・両隣の健康な歯を削る必要がある
・支えとなる歯に負担がかかるため、将来的に問題が生じる可能性がある
・清掃が難しく、虫歯や歯周病のリスクが高まる
【ブリッジが向いている人】
・両隣の歯が健康でしっかりしている方
・インプラントが難しい方(骨が少ない、外科手術を避けたい方)
・できるだけ短期間で治療を完了したい方
◎入れ歯の特徴
入れ歯は、取り外し可能な義歯を用いて、失った歯の機能と審美性を補う治療法です。総入れ歯と部分入れ歯の2種類があり、患者様の歯の欠損状況に応じて適切なものを選択します。歯茎や粘膜の上にのせる形で装着され、咀嚼機能を回復させるとともに、噛み合わせのバランスを維持する役割も果たします。また、適切なメンテナンスを行うことで、長期間使用することが可能です。しかし、義歯の安定性や装着時の違和感には個人差があるため、患者様の適応能力に応じた調整が必要となります。
【入れ歯のメリット】
・健康な歯を削らずに済む
・比較的費用が抑えられる
・多くの歯を失った場合にも対応可能
【入れ歯のデメリット】
・装着時に違和感があることが多い
・定期的な調整が必要
・噛む力が弱くなり、食事に影響が出ることがある
【入れ歯が向いている人】
・外科手術を避けたい方
・インプラントやブリッジが難しい方
・費用を抑えたい方
◎インプラントの特徴
インプラントは、歯を失った部位に人工の歯根(チタン製のインプラント体)を顎の骨に埋め込み、その上に人工歯を固定する治療法です。インプラント体は骨と結合する性質(オッセオインテグレーション)を持ち、天然歯に近い強度と安定性を実現します。治療は通常、インプラント体を埋入する手術と、人工歯を装着する二段階に分かれます。骨の状態によっては骨造成手術(GBR法やサイナスリフト)が必要となることもあります。正しい噛み合わせを維持しながら、自然な見た目と機能を回復できるため、近年注目されている治療法の一つです。
【インプラントのメリット】
・周囲の歯に負担をかけない
・天然歯に近い見た目と噛む力を再現できる
・長期間使用できる
【インプラントのデメリット】
・外科手術が必要
・治療期間が長い(数ヶ月~1年)
・保険適用外が多く、費用が高め
【インプラントが向いている人】
・健康な顎の骨が十分にある方
・長期的にしっかり噛める歯を求める
・他の治療法よりも自然な見た目や機能を優先する方
▼歯科医師はどの選択肢を選ぶ?
歯科医師自身が歯を失った場合、どの治療法を選ぶのでしょうか。ブリッジ、入れ歯、インプラントにはそれぞれメリット・デメリットがありますが、総合的に判断すると、多くの歯科医師がインプラントを選択する傾向にあります。その理由を詳しく解説します。
1.機能性と耐久性の高さ
インプラントは、顎の骨と結合することで天然歯に近い強度と安定性を確保できます。咀嚼力が高く、硬い食べ物もしっかり噛むことができるため、食事の楽しみを損なうことがありません。一方、ブリッジは支えとなる歯に負担がかかり、長期間使用すると支台歯が弱るリスクがあります。入れ歯は固定力が劣り、特に総入れ歯の場合は食事の際にズレやすいという課題があります。
2.健康な歯を守ることができる
ブリッジの場合、両隣の健康な歯を削る必要がありますが、インプラントは独立した構造のため、周囲の歯に負担をかけることがありません。歯科医師は、自身の歯をできる限り長持ちさせることを重視するため、インプラントの選択肢が有力視されます。
3.長期的なコストパフォーマンス
インプラントは初期費用が高額ですが、適切なケアを行えば10年以上の長期使用が可能です。一方、ブリッジや入れ歯は定期的な交換が必要になることが多く、長期的に見るとインプラントの方が経済的メリットがあると考えられます。
4.実際にインプラントを選ぶ歯科医師が多い
実際に、多くの歯科医師が自身の治療にはインプラントを選ぶと言われています。これは、歯科医師がインプラントの安全性や有効性を理解していること、また治療後の快適さを実感できるためです。インプラント治療は技術的な進歩が著しく、成功率も高いため、専門知識を持つ歯科医師が選択する理由となっています。
▼まとめ
歯を失った後の治療には、「ブリッジ」「入れ歯」「インプラント」の3つの選択肢があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、患者様の状況に合わせた治療法を選ぶことが大切です。ブリッジは短期間で治療が完了し、固定式のため使いやすいですが、隣の歯を削る必要があります。入れ歯は健康な歯を削る必要がなく、費用を抑えられますが、装着時の違和感がある場合があります。インプラントは自然な見た目と噛む力を回復できますが、手術が必要で治療期間が長くなります。
歯を失ったまま放置すると、噛み合わせのバランスが崩れ、残った歯への負担が増えてしまいます。適切な治療を選択することで、長く健康な口腔環境を維持することができます。どの治療が適しているのか、お悩みの際はお気軽にご相談ください。