歯並びが悪いと見た目に影響があるだけでなく、噛み合わせの不調和や虫歯・歯周病のリスクが高まることをご存じでしょうか?実は、歯並びの問題は口腔内の健康に加えて、全身の健康にも関わる重要な要素です。しかし、歯並びの問題を放置してしまう方も少なくありません。
そこで本コラムでは、歯並びが悪い状態とはどのようなものか、放置することで生じるリスク、そして矯正治療を行うことで得られるメリットについて、歯科医師が詳しく解説します。ご自身やお子様の歯並びについて気になっている方は、ぜひ参考にしてください。
▼そもそも歯並びが悪い状態とは?
歯並びが悪い状態とは、歯が正しい位置に並んでおらず、噛み合わせに影響を及ぼしている状態を指します。具体的には以下のような症状が挙げられます。
◎叢生(そうせい)
歯が重なり合って生えてしまう状態です。顎のスペースが足りない場合に起こりやすく、歯磨きがしにくいため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
◎上顎前突(出っ歯)
上の前歯が前に突出している状態です。口を閉じにくく、前歯に負担がかかるため、外傷を受けやすくなります。
◎反対咬合(受け口)
下の前歯が上の前歯より前に出ている状態です。食事がしにくく、発音にも影響を及ぼすことがあります。
◎開咬(かいこう)
奥歯が噛み合っていても前歯が開いてしまい、しっかり噛めない状態です。発音や咀嚼に支障をきたすことがあります。
◎過蓋咬合(かがいこうごう)
上の前歯が下の前歯を覆い隠してしまう状態です。下の歯茎を傷つけやすく、顎関節への負担が大きくなります。
▼悪い歯並びを放置するリスク
歯並びが悪い状態を放置すると、見た目の問題だけでなく、健康面にも深刻な影響を及ぼします。
◎虫歯・歯周病のリスク増加
歯が重なっていたり、適切に噛み合っていなかったりすると、歯磨きがしづらくなります。歯垢が溜まりやすくなることで細菌が繁殖し、虫歯や歯周病を引き起こします。特に歯周病は歯茎の炎症を伴い、進行すると歯を支える骨が溶け、最悪の場合、歯を失う原因になります。また、歯周病の細菌は血流に入り込むことで全身に影響を及ぼし、糖尿病や心疾患のリスクを高めることが指摘されています。
◎噛み合わせの不調による顎関節症
噛み合わせが悪いと、顎関節に過度な負担がかかり、顎関節症を引き起こします。顎がカクカク鳴る、口が開けにくい、顎に痛みを感じるといった症状が現れ、進行すると頭痛や肩こり、耳鳴りなどの全身症状につながることもあります。特に日常的に歯ぎしりや食いしばりをする方は、顎関節にさらに負担がかかり、悪化するリスクが高まります。
◎発音や咀嚼機能の低下
歯並びが悪いと、正しい舌の動きが制限され、発音がしにくくなります。特に、サ行やタ行の発音が不明瞭になり、言葉の聞き取りに影響を与えることがあります。また、歯がしっかり噛み合わないと、食べ物を十分に噛み砕けず、消化不良を引き起こしやすくなります。未消化の食べ物が胃腸に負担をかけ、胃炎や腸の不調を招くこともあります。
◎口呼吸による健康リスク
歯並びが悪いと、口を自然に閉じることが難しくなり、口呼吸が習慣化することがあります。口呼吸は口腔内の乾燥を招き、唾液の自浄作用が低下するため、虫歯や歯周病、口臭の原因になります。また、口呼吸によって喉や気道が乾燥し、ウイルスや細菌が侵入しやすくなることで、風邪やインフルエンザにかかりやすくなる可能性も指摘されています。さらに、口呼吸は睡眠時無呼吸症候群(SAS)とも関連があり、十分な酸素を取り込めないことで睡眠の質が低下し、日中の集中力の低下や疲労感の原因にもなります。
▼悪い歯並びを矯正で治すメリット
矯正治療によって歯並びを整えることで、口腔内だけでなく全身の健康にも良い影響を与えます。以下の6つのメリットを詳しく解説します。
1.虫歯・歯周病の予防
歯並びが整うことで歯と歯の間の隙間が適切になり、歯磨きがしやすくなります。これにより、歯垢や歯石が溜まりにくくなり、虫歯や歯周病の発生リスクが大幅に低下します。歯周病は全身疾患とも関連しており、動脈硬化や糖尿病のリスクを高める可能性があるため、矯正治療を通じて予防することは重要です。
2.正しい噛み合わせの獲得
矯正治療により噛み合わせが整うことで、食事の際に均等な力で噛むことができるようになります。これにより、顎関節への負担が軽減され、顎関節症のリスクを抑えられます。また、偏った咀嚼による片側の筋肉の過剰な発達を防ぎ、顔の左右バランスが整う効果も期待できます。
3.消化吸収の向上
歯並びが悪いと、しっかりと食べ物を噛むことができず、大きなまま飲み込んでしまうことがあります。これが消化器官への負担を増加させ、胃腸の不調を引き起こすことがあります。矯正治療によりしっかりと咀嚼できるようになれば、食べ物が細かく砕かれ、消化吸収の効率が向上します。
4.発音の改善
歯並びが整うことで、舌や唇の動きがスムーズになり、発音が明瞭になります。特に、サ行やタ行などの発音が不明瞭になる方にとっては、矯正治療が言葉の発達に大きく寄与します。お子様の場合、学校生活やコミュニケーションの向上にもつながるため、発音に関する悩みを抱える方には矯正治療が有効な手段となります。
5.顔のバランスと美容的効果
歯並びは顔の輪郭や表情にも影響を与えます。歯並びが整うことで、口元のバランスが美しくなり、フェイスラインが整うことが期待できます。また、出っ歯や受け口の改善により、横顔の印象が大きく変わることもあります。歯並びの美しさは自信にもつながり、笑顔に対するコンプレックスを解消することができます。
6.睡眠の質の向上
歯並びが悪いことで、口呼吸が習慣化することがあります。口呼吸は口腔内の乾燥を引き起こし、細菌の増殖を促すため、虫歯や歯周病のリスクを高めるだけでなく、睡眠時無呼吸症候群(SAS)を引き起こす可能性もあります。矯正治療により正しい噛み合わせと鼻呼吸が確立されることで、睡眠の質が向上し、日中の集中力の向上や疲労回復にもつながります。
このように、矯正治療には見た目の美しさだけでなく、健康維持や生活の質を向上させる多くのメリットがあります。歯並びにお悩みの方は、ぜひ矯正治療を検討してみてください。
▼歯並びは大人になってからでも治せます
「矯正治療は子供の頃にしかできない」と思っていませんか?実は、大人になってからでも歯並びを整えることは可能です。成人矯正は、骨の成長が完了しているため、子供の矯正よりも時間がかかることがありますが、適切な治療計画を立てることで、美しい歯並びと健康的な噛み合わせを手に入れることができます。
大人の矯正には、目立ちにくいマウスピース型矯正(インビザライン)や、歯の裏側に装置をつける舌側矯正など、多くの選択肢があります。また、矯正治療によって歯並びが整うことで、顎関節の負担が軽減され、肩こりや頭痛が改善するケースもあります。見た目だけでなく、健康面のメリットも大きいのが成人矯正の特徴です。
▼まとめ
歯並びが悪い状態を放置すると、見た目の問題だけでなく、虫歯や歯周病、顎関節症、咀嚼や発音の障害など、さまざまなリスクが生じます。矯正治療によって歯並びを整えることで、これらのリスクを減らし、健康的な口腔環境を維持することができます。特にお子様の矯正は、成長過程に合わせた適切な治療を行うことで、より良い結果を得ることが可能です。歯並びでお悩みの方は、ぜひ一度、当院へご相談ください。